2020年10月22日木曜日

後ろを向いているのではありません。

 前に進むために記憶の整理をしているのです。整理しているのは君のことだけではありません。ぼくのあの物語に登場するのは君だけではないのです。もちろん君が出てこないぼくの物語は成立しないことは事実です。けれど,すべてのものがたりに君が出てくるというのは傲慢です。ぼくの君はそこまで傲慢ではありません。

ちゃんとこのことは整理してもう一度電話します。話します。時間はつくろうと思っていますから。

2020年10月17日土曜日

大田区の区役所から池上方面へ50mも歩くと公衆電話があった

黄色い公衆電話は100円玉をつかうことができたから都内になら30分は話すことができた。彼女を暗い事務所に長時間立たせておく訳にはいかないから,夜の会話は100円で繰り上げることにしていた。そうでない日もあったかも知れない。とにかく,その公衆電話は彼女に電話するためにだけ存在していた。

4畳半の下宿に電話なんかあるはずもない昭和50年頃の話だ。大森駅から下宿まではもちろんいつも歩いた。人通りも少なくなる時間には,環七ぞいの交番のおまわりさんによく職務質問された。平和な時代だった。

話をごまかした。